ガイドライン手続き別2026.07.20
CE認証があれば韓国の医療機器許可も取れますか?
CE・FDAと韓国MFDSの許認可の間に相互承認はなく、まったく別個の制度です。ただし資料はかなりの部分を再利用できます — どこまで流用でき、どこで追加試験が発生するのかを、資料インベントリ→ギャップ分析の順に整理しました。
要点サマリー — CEとMFDS(韓国食品医薬品安全処、旧KFDA)の許認可の間に相互承認はありません。CEがあっても、韓国国内の手続きは最初から踏むことになります。ただし制度は別個でも、資料は再利用できます。 CB成績書・GLP成績書・CE技術文書をどこまで活かせるかが準備期間の大半を決め、その判断は必ず「資料インベントリ → ギャップ分析」の順で行わないと誤ります。
制度は別個、資料は再利用 — 要点はこの一行に尽きます
輸入業者の実務担当者から最も多く受ける質問がこれです。「製造元がCEを持っているのですが、韓国でそのまま販売できますか?」答えは明確です。できません。 CEは欧州市場への参入要件であり、韓国での販売にはMFDSの申告・認証・許可が別途求められます。欧州・米国と韓国の間に、医療機器の許認可を相互に認め合う協定は存在しません。FDAクリアランス/承認についても同様です。
クラスすら自動的には引き継がれません。EUでClass IIaの製品が、韓国でもクラスIIであるという保証はありません。韓国でのクラスはMFDSの品目分類体系に従って改めて確認する必要があり、クラスによって手続きが申告(クラスI)・認証(クラスII)・許可(クラスIII・IV)に分かれます。ここで注意していただきたいのは、日本のように最上位が「承認」なのではなく、韓国ではクラスIII・IVが「許可」という名称で運用されている点です。三つの手続きの違いはクラス別手続きガイドに整理しています。
許認可の名義人も異なります。CEは製造者が適合宣言を行い欧州代理人を置く構造ですが、韓国では輸入品の許認可は韓国国内の輸入業者名義で取得します。実務上、この違いは想像以上に重くのしかかります。審査に必要な資料の原本はその大半が製造元の金庫の中にあり、輸入業者はそれを引き出さなければならない立場だからです。製造元との資料協力体制を初期に文書で合意しておくことが、以降すべての段階のスピードを左右します。
とはいえ、悲観する理由はありません。CEを取得しているということは、IEC 60601-1、ISO 10993シリーズ、ISO 14971といった国際規格に基づく試験と文書を、すでに一巡させたということです。韓国の審査も同じ国際規格を骨格としているため、問題は「認められるか」ではなく「どのような条件で認められるか」です。
海外の試験成績書は、どこまで認められるか
MFDSは、韓国国内の登録試験検査機関が発行した成績書のほかに、国際的に公認された二つの経路の成績書を受け入れています。
| 試験項目 | 認められる経路 | 実務上の条件 |
|---|---|---|
| 電気・機械的安全(IEC 60601-1) | IECEE CB制度のNCBが発行したCB成績書 | 規格のバージョンが韓国の共通基準規格と整合していること |
| 電磁両立性(IEC 60601-1-2) | CB成績書 | 上と同じ。EMCはバージョン差が特に生じやすい |
| 生物学的安全性(ISO 10993シリーズ) | OECD GLP試験機関の成績書 | GLP適合表示の確認、接触部位・接触時間の分類が韓国側の判断と一致すること |
| 性能試験 | 製品による | 韓国に個別基準規格がある品目は、その試験項目・条件を満たすこと |
一点、注意すべきことがあります。「CE取得時に使った成績書」と「CB成績書」は同じものではありません。 欧州の認証機関(Notified Body)が受理した試験報告書であっても、CB制度の外で発行されたものであれば韓国での受入対象にならない場合があります。まず成績書の表紙でCBマークと発行機関(NCB)を確認してください。成績書ごとの受入要件の詳細は海外試験成績書の受入範囲ガイドで別途扱います。
追加試験が発生する四つの典型パターン
ギャップ分析を行うと、追加試験はおおむね次の四つのいずれかから生じます。
1. 韓国の個別基準規格に固有の項目 — 品目によっては、MFDSの基準規格が国際規格にない試験項目や、異なる判定基準を求めることがあります。このギャップは成績書をいくら積み上げても埋まらないため、真っ先に確認すべきです。
2. 試験条件・モデルの不一致 — CE試験に用いたサンプルと韓国へ輸入するモデルが異なる場合(派生モデル、アクセサリ構成の違い、定格電圧の違い)、成績書の代表性が揺らぎます。モデル間差異の説明資料で解決できる場合もあれば、差分試験が必要になる場合もあります。
3. 成績書の古さ — 発行から年数が経った成績書には、試験以降に製品変更がなかったことを説明する資料の添付を求められるのが通例です。製造元の変更履歴管理記録がここで効いてきます。
4. 規格バージョン(エディション)の違い — 旧エディションで試験した成績書は、韓国の共通基準規格が参照するバージョンとの差分分析、あるいは差分試験が必要になることがあります。EMCで特に引っかかりやすい箇所です。
ソフトウェアを搭載した製品であれば、もう一つ加わります。IEC 62304に基づくソフトウェアライフサイクル文書と、通信機能がある場合はサイバーセキュリティ資料です。医療機器ソフトウェア(SaMD)については、CE対応の過程で作成した文書があっても、韓国の提出様式と要求水準に合わせて整理し直す必要があるのが通例です。滅菌製品であれば、ISO 11135(EO滅菌)・ISO 11137(放射線滅菌)のバリデーション資料と、ISO 11607の滅菌包装資料が同じ観点での点検対象になります。
なお、体外診断分野の製品には制度上の前提の違いがあります。日本では体外診断用医薬品として医薬品の枠組みで扱われますが、韓国では体外診断医療機器(IVD)として医療機器の枠組みの中で別途規律されます。参照すべき法令も手続きの流れも異なるため、日本の感覚のまま準備すると出発点から食い違います。
CE Technical File → 韓国の技術文書:翻訳ではなく再構成です
二つ目の誤解がここにあります。「技術文書はCEのものを翻訳すればいいですよね?」— いいえ、それでは通りません。CE技術文書はGSPR(一般安全・性能要求事項)チェックリストを軸とした適合性の立証文書集であり、韓国の技術文書は「医療機器の許可・申告・審査等に関する規定」が定める項目(使用目的、作用原理、性能、原材料、使用方法など)を埋めていく様式ベースの文書です。構造が異なるため、まず項目マッピングを行い、韓国の様式に合わせて書き直す必要があります。
実際の作業で最も時間を食うのは翻訳ではなく「情報探し」です。韓国の様式が求める原材料の詳細(接触部の材質の化学名・規格)、保管方法と使用期限の設定根拠、試験規格と成績書のひも付けといった情報は、CE技術文書の中に散らばっているか、そもそも製造元の社内設計文書にしか存在しないことが少なくありません。マッピング表を作れば「韓国様式のこの項目は、CE文書のどのファイルの何ページから持ってくる」が一目で分かり、空欄がそのまま製造元へ依頼する資料リストになります。項目ごとの作成要領は技術文書作成の実務ガイドをご参照ください。
実務の順序:インベントリが先、ギャップ分析はその次
順序を守ることが、そのままスピードになります。
ステップ1:資料インベントリ — 製造元が保有する資料を、文書名・発行機関・適用規格とバージョン・発行日・試験モデル名まで落として一覧表にします。「CEはあります」で止めず、文書単位まで降りることが肝心です。
ステップ2:韓国側の要求事項マトリクス — 品目分類とクラスを確定し、当該品目の基準規格・共通基準規格から要求される試験の一覧を抽出します。
ステップ3:ギャップ分析 — 二つの表を突き合わせ、各項目を「そのまま受入 / 説明資料で補完 / 再試験」に仕分けます。再試験項目が確定して初めて、試験の発注とスケジュールが決まります。
順序を逆にするとどうなるかも申し上げておきます。インベントリなしに「とりあえず試験から」発注すると、すでに受入可能なCB成績書がある項目を重複して試験したり、逆に本当に必要な韓国固有の項目を落としたまま審査に入り、補完要求で差し戻されたりします。いずれも数週間ではなく数か月単位の損失です。ギャップ分析は一日二日の机上作業ですが、その一日が試験スケジュール全体を守ってくれます。
輸入業許可を伴う案件であれば、これと並行してKGMP(K-GMP、韓国GMP/輸入)の準備も別トラックで走らせることで、全体日程が縮みます。ISO 13485認証があればKGMPの準備は進めやすくなりますが、これもまた自動的に認められるわけではありません。
よくある差戻し・補完要求の理由
- CB成績書の規格バージョンが、韓国の共通基準規格の参照バージョンと不一致
- GLP適合表示のない生物学的安全性成績書を提出
- 成績書の試験モデル名と輸入申請モデル名が不一致で、差異の説明が欠落
- CE技術文書の翻訳版をそのまま提出し、韓国様式の必須項目が欠落
- 古い成績書について、無変更であることの説明資料が不備
- EUのクラスをそのまま前提にして手続きを誤選択(認証対象を許可として、またはその逆)
着手前チェックリスト
- 韓国での品目分類・クラスの確認 — EUのクラスをそのまま信じない
- 製造元が保有する成績書のインベントリ作成(規格バージョン・発行機関・発行日・試験モデル)
- 各成績書がCB / GLPに該当するかを表紙で確認
- 当該品目に韓国の個別基準規格があるか、固有の試験項目があるかを確認
- CE Technical File ↔ 韓国技術文書の項目マッピング表の作成
- 試験モデルと輸入モデルの差異(派生・アクセサリ・定格)の洗い出し
- 輸入業許可を取る場合、KGMP準備トラックの並行計画の策定
CEがあるという事実だけでは何も確定しませんが、資料の一覧さえあれば多くのことが確定します。製造元から受け取った成績書・技術文書のリストをお送りいただければ、無料事前レビューにて「そのまま受入 / 補完 / 再試験」の三分類によるギャップ分析の骨組みを作成いたします。
よくあるご質問
- Q. CE認証があれば韓国での許認可は免除されますか?
- 免除されません。CEとMFDSの許認可の間に相互承認協定はなく、韓国国内で販売するにはクラスに応じて申告・認証・許可の手続きを別途踏む必要があります。ただし、CE取得の過程で作成した試験成績書と技術文書は、条件を満たせば韓国の審査に再利用できます。
- Q. CE取得時に使った試験成績書はそのまま認められますか?
- 条件付きです。電気・機械安全とEMCはIECEE CB制度に基づくCB成績書、生物学的安全性はOECD GLP試験機関の成績書であれば通常認められます。ただし、規格のバージョン、試験モデル、成績書の発行時期が韓国側の要求事項と整合している必要があり、製品によっては追加試験が生じることもあります。
- Q. CEがあると韓国での審査期間は短くなりますか?
- 審査期間そのものはクラス別の通常期間(クラスIIの認証で約3〜4か月、クラスIIIの許可で約6〜8か月)と変わりません。短縮されるのは準備期間です。認められる成績書が多いほど、試験の発注を経ずに技術文書の作成へ直接進めます。
