ガイドライン試験資料2026.07.20
海外の試験成績書は韓国の許認可に使えるのか?
製造元がすでに保有しているCB成績書や海外試験データは、韓国の許認可にどこまで使えるのか。認められるものと再試験が必要なものの境界線、そして補完(追加資料要求)につながる落とし穴を実務目線で整理しました。
要点サマリー — 海外の試験成績書を韓国の許認可に使えるかという問いの答えは「はい/いいえ」ではなく、「どの試験が、どのような条件で発行されたか」です。電気・EMCにはIECEE CB制度という国際的な受入経路があり、生物学的安全性にはGLP・OECD相互受入という別個の関門があり、性能試験は概ね韓国の基準規格に照らして改めて確認されます。補完(追加資料要求)の大半は「成績書がないから」ではなく、「あるのに条件が合わないから」発生します。
輸入の許認可相談で最もよく聞くのがこの一言です。「製造元にCEもあるし、試験成績書も一式そろっています。それを使えばいいですよね?」半分は正しく、半分は誤りです。試験成績書は種類ごとに受入経路が異なり、同じCB成績書でも規格の版ひとつのせいで使えないことがあります。本稿では「何が認められ、何をやり直す必要があり、なぜ一見問題のないデータが差し戻されるのか」を審査の視点から整理します。手続きの全体像が曖昧な場合は、先に申告・認証・許可の違いをご覧いただくと理解が早くなります。
試験の種類ごとに受入経路が異なる
海外成績書の活用をひとかたまりで捉えると、必ず混乱します。試験を三つに分け、それぞれの受入条件を検討する必要があります。
| 試験区分 | 代表的な規格 | 韓国での受入構造 | 実務上の難易度 |
|---|---|---|---|
| 電気・機械安全、EMC | IEC 60601-1、IEC 60601-1-2 | IECEE CB制度(国際認定試験機関のCB成績書)による受入 | 比較的スムーズ |
| 生物学的安全性 | ISO 10993シリーズ | GLP遵守+OECD相互受入(MAD)対象データ | 条件が厳しい |
| 性能試験 | 品目別の個別基準規格 | 概ね韓国の基準規格の条件に照らして審査 | 再試験が頻発 |
要点はこうです。電気安全には「国際的に一度試験すれば相互に認め合う」制度があり、生物学的安全性には「GLPという資格を備えた機関のデータのみ受け付ける」制度があり、性能は「韓国の基準で改めて見る」に近い。この三つを混同すると、準備すべきものがずれてしまいます。
電気・EMC — CB成績書という国際的な通路
電気・機械安全性とEMCは、海外データの活用が最も通りやすい領域です。その根拠がIECEE CB制度です。この制度に参加する国際認定試験機関がIEC規格に従って試験し発行したCB成績書(CB Test Certificate+CB Test Report)は、加盟国間で相互に受け入れることを前提に設計されています。製造元がIEC 60601-1およびIEC 60601-1-2で取得済みのCB成績書を持っているなら、韓国の許認可でもそのまま活用できる余地が大きくなります。
ただし「CBだから無条件で通る」というのは誤解です。実務で行き詰まるのは成績書そのものではなく、成績書の条件です。
1. 規格の版(エディション) — IEC 60601-1は版および改訂(Amendment)によって要求事項が異なります。古い版で取得した成績書は、現行の韓国側の受入基準と食い違う可能性があります。
2. 各国相違(National Difference) — CB成績書に韓国関連の各国相違項目が反映・試験されているかを確認する必要があります。ここが空白だと、差分試験を追加で求められることがあります。
3. 型式・構成の一致 — 成績書上の型式名・定格・オプション構成が、韓国での申請型式と一致している必要があります。派生型式を成績書1通でまとめようとして差し戻されるケースは頻繁にあります。
電気医療機器の審査の基本的な流れは認証(クラスII)ガイドと同じ枠組みをたどります。ソフトウェアが組み込まれた製品であればIEC 62304とサイバーセキュリティ要件が加わるため、SWサイバーセキュリティ審査も併せてご確認ください。
生物学的安全性 — GLPという資格の関門
人体に接触する製品であれば、ISO 10993シリーズの生物学的安全性データが必要です。ここでの海外成績書活用の成否は誰が発行したかで決まります。
韓国では、生物学的安全性の試験データはGLP(非臨床試験実施基準)を遵守した試験機関のものである必要があります。つまり一般の試験所で取得した成績書は、体裁がどれほど整っていても許認可資料としては認められにくいということです。海外データの場合は、OECD相互受入(MAD, Mutual Acceptance of Data)の枠組みに入るGLP機関が発行したデータかどうかが関門となります。OECD加盟国および相互受入対象国のGLP遵守データであれば韓国側の検討対象になりますが、それ以外のデータは再試験につながるケースが多くあります。
ここにもう一つ実務上の落とし穴があります。接触の種類・接触期間が成績書と実際の製品とで異なるケースです。ISO 10993-1の評価は「どの組織に、どれだけの時間触れるか」で試験項目が決まります。製造元が別の区分を前提に取得した成績書であれば、自社製品の接触シナリオと合わず、項目に欠落が生じます。生物学的安全性データを再利用する際は、化学的特性・材質情報(接触部の原材料まで)が併せて整理されていないと、ギャップの判断ができません。滅菌製品であれば、ISO 11135(EO)・ISO 11137(放射線)・ISO 11607(滅菌包装)のデータについても、同じ考え方で条件の一致を確認します。
性能試験 — 「韓国の基準で改めて見る」に近い
性能試験は、海外データの活用が最も通りにくい領域です。品目別の個別基準規格の試験条件が、海外成績書の条件と異なる場合が多いためです。測定方法、判定基準、試験環境が韓国の基準規格とずれていれば、結果の数値がどれほど良くても条件不一致として再試験を求められます。ネブライザのように性能が中心となる品目でこの問題は顕著で、ネブライザガイドでも繰り返し指摘しているボトルネックです。リハビリロボットのように性能と安全が複合するリハビリロボット品目も同様です。
事前に必ず確認すべき五つの点
成績書を受け取る前に以下の五点を確認しておけば、補完の大半は回避できます。
| 確認項目 | 何を見るか | ずれていると |
|---|---|---|
| 規格の版・改訂 | 成績書が引用する規格のエディション・Amendment | 現行基準と不一致 → 差分試験 |
| 試験条件 | 測定法・判定基準・環境条件 | 韓国の基準規格と不一致 → 再試験 |
| 型式・オプションの一致 | 成績書の型式名が申請型式と同一か | 派生型式をカバーできない → 追加試験 |
| 試験所の資格 | 国際認定試験機関・GLPの有無 | 無資格のデータ → 受入不可 |
| 発行時期 | 成績書が発行された時点 | 古すぎるデータ → 再確認の要求 |
資料選別の実務 — インベントリからギャップ分析へ
海外成績書活用の定石は「あるものを全部出す」ではなく選別です。手順は次のとおりです。
1. インベントリ — 製造元が保有する成績書を、試験種類・規格・版・発行日・型式を軸にリスト化します。この段階で、CE技術文書に添付された成績書の原本(要約版ではなく)を確保することが重要です。
2. ギャップ分析 — 韓国の基準規格・要求項目と突き合わせ、「受入可能」「条件確認が必要」「再試験」の三つに分類します。この表がそのまま予算とスケジュールの骨格になります。
3. 確保・発注 — 活かせるデータは原本・翻訳・公証を準備し、再試験項目のみ韓国で発注します。技術文書の作成段階と噛み合うため、技術文書作成ガイドと並行して進めると無駄が減ります。
輸入製品であれば通関・ラベリングのスケジュールとも絡むため、輸入・通関ガイドをご参照ください。用語に馴染みがない場合は、技術文書・KGMPの用語集が役に立ちます。
よくある差し戻し・補完の理由
- CB成績書の規格の版(エディション)が現行の受入基準と不一致
- 成績書の型式名・定格・オプションが韓国での申請型式と不一致(派生型式を無理にまとめている)
- 生物学的安全性データがGLP非遵守機関の発行 → 受入不可
- ISO 10993の接触の種類・期間が実際の製品と異なり、試験項目が欠落
- 性能試験の条件が韓国の基準規格と異なり条件不一致
- 成績書の原本ではなく要約版・抜粋版のみを提出
- 試験所が国際認定試験機関の資格を有していない
着手前チェックリスト
- 保有する成績書のインベントリ作成(試験種類・規格・版・発行日・型式)
- CB成績書に各国相違(National Difference)が反映されているかの確認
- 生物学的安全性データのGLP・OECD相互受入対象該当性の確認
- ISO 10993の接触の種類・期間が実際の製品と一致しているかの照合
- 成績書の型式名・オプションと申請型式の一致確認
- 韓国の基準規格とのギャップ分析 → 受入可/条件確認/再試験の3分類
- 原本・翻訳・公証が必要な書類のリスト化、再試験項目のみ発注
同じ製造元のデータであっても試験の種類ごとに受入経路は異なり、一見問題のない成績書が条件ひとつのために使えなくなることもあります。製造元の成績書リストと製品仕様書さえいただければ、無料事前レビューで「活かせるデータと、やり直す試験」を切り分けてご提示します。必要な試験項目の骨格と大まかなスケジュールは許認可サービスのご案内でご確認ください。
よくあるご質問
- Q. 製造元が持っているCB成績書をそのまま韓国の許認可に提出できますか?
- 電気・機械安全性(IEC 60601-1シリーズ)については、IECEE CB制度に基づき国際認定試験機関が発行したCB成績書が韓国でも認められる仕組みになっています。ただし、成績書が引用する規格の版(エディション)、試験条件、型式名・オプション構成が韓国での申請内容と一致している必要があり、各国相違(National Difference)が反映されているかも確認が必要です。CB形式であれば無条件に通るわけではありません。
- Q. 海外で取得した生物学的安全性(ISO 10993)の成績書は認められますか?
- 生物学的安全性はGLP(非臨床試験実施基準)を遵守した試験機関のデータである必要があり、OECD相互受入(MAD)対象国のGLP機関が発行した成績書かどうかが最大の関門です。一般の試験所やGLP非遵守のデータは認められず、再試験に至るケースが多くあります。製品によって要求される試験項目も変わり得ます。
- Q. 海外の成績書があれば、韓国での試験は一切不要になりますか?
- そうはなりません。認められる項目(電気安全・EMCなど)と、再試験が必要な項目(性能試験、一部の生物学的試験など)に分かれます。まず保有データのインベントリを作成し、韓国の基準規格とのギャップ分析によって「活かせるデータ」と「新たに実施する試験」を選別するのが定石です。
