ガイドラインGMP2026.09.15
MDSAP審査対応ガイドライン3種 — 出ていく扉であり、入ってくる扉
食薬処が2026年8月28日にMDSAP審査対応ガイドライン3種を発刊しました。国内製造社の海外進出を助ける資料ですが、同じMDSAP適合認定書が国内のKGMP手続きも短くします。5か国協議体の構造と3品目の選定理由、そして国内で実際に何が変わるのかを条文と原文で整理しました。
要点サマリー — 食薬処が2026年8月28日にMDSAP審査対応ガイドライン3種を制定・発刊しました。表向きの目的は国内製造社の海外進出支援です。ところが同じMDSAP適合認定書が国内のKGMP手続きも短くします — 書類検討だけで審査を受ける道が開き、適合認定書の有効期間がMDSAPと同じに算定されます。出ていく扉と入ってくる扉が同じ文書一つで開きます。ただし免除ではなく手続きの短縮だという点は条文で確認しておく必要があります。2026年9月確認基準で報道参考資料の原文とKGMP告示を直接照合して整理しました。
1. 何が出たか
| 内容 | |
|---|---|
| 発刊日 | 2026年8月28日 |
| 形式 | 民願人案内書(ガイドライン)3種、制定 |
| 担当 | 食品医薬品安全処 医療機器管理課 |
| 確認経路 | 食薬処ホームページ → 法令・資料 → 法令情報 → 公務員指針書・民願人案内書 |
3品目は国内医療機器の輸出実績等を考慮して選定されたと明らかにしています。
| 品目 | 等級 | 報道参考資料の説明 |
|---|---|---|
| 汎用電気手術器 | 3等級 | 高周波電流を使用して切開または凝固等に使用する器具 |
| 組織修復用生体材料 | 4等級 | 血管・心臓・隔膜・筋膜・皮膚など人体組織及び器官の代替・修復・再建に使用される生体由来材料 |
| 汎用超音波映像診断装置 | 2等級 | 診断のために患部に超音波エネルギーを伝送し、反射信号を受信して映像化する装置 |
等級が2・3・4に分かれ、系列も違います。機械・器具系列(電気手術器・超音波診断装置)と材料・用品系列(生体材料)が一緒に入っています。自社品目が3種と正確に一致しなくても系列が近ければ参考にする余地がある構成です。
ガイドラインが盛り込んだものとして列挙された項目は次のとおりです。
- MDSAP審査制度の概要
- MDSAP正会員国の要求事項
- 製造工程別の審査特性
- 滅菌医療機器の審査基準
- 品質文書の様式及び事例
さらに「機械・器具、材料・用品のように医療機器別の特性を考慮して審査時に準備すべき項目」も併せて含めたと明らかにしています。
2. MDSAPの構造 — 5か国が一度に見ます
報道参考資料はMDSAPを医療機器の製造及び品質管理基準の共同審査を目的として2017年に作られた国際協議体と説明します。参加国は次のように列挙されています。
米国、カナダ、日本、豪州、ブラジルの5か国
そしてMDSAP認証を取得すれば当該国のGMP認証審査を全面的または一部免除され得ると書きます。
一度の審査で5か国を通過する構造です。輸出を複数国で同時に準備する会社なら、審査回数と準備文書が減る効果が大きくなります。
3. ところが国内でも変わります
ここがこのニュースの実務的な重みです。「医療機器製造及び品質管理基準」(食薬処告示第2026-46号、2026年7月1日施行)はMDSAPを別表1第70号でこう定義します。
米国、日本など正会員国が共同で指定して運営する審査機関から受けた品質経営システム適合性認定審査結果を複数の国で相互承認する制度
そして3か所で実際の効果を与えます。
| 条文 | 効果 |
|---|---|
| 第6条第2項第6号 | MDSAP適合認定書を保有する場合、書類検討のみで適合性認定等の審査を実施できる |
| 第7条第3項 | 提出資料が変わる — MDSAP適合認定書の写しと審査結果資料(不適合報告書と是正・予防措置を含む)、品目群別の最も高い等級の品目の製品標準書、医療機器法令要求事項の資料5種、MDSAP対象製品と審査対象製品の相関関係資料 |
| 第9条 | 現場調査なしに書類検討だけを受けた場合、適合認定書の有効期間をMDSAP適合認定書と同一に算定する |
もう一つ。第3条第2項第3号ナ目は製造工程を受託して製造する製造所で他の業者が有効な適合認定書を保有する場合を扱いながら、その適合認定書が現場調査なしに書類検討で発給されたものであればMDSAP適合認定書(現場調査を受けて有効な場合に限る)を提出するよう定めます。
4. 免除ではなく手続きの短縮です
よく誤解される点なので条文で釘を刺しておきます。MDSAPがあってもKGMP適合性認定の手続きそのものはなくなりません。告示が与えるのは書類検討だけで審査を受ける道であって審査の免除ではありません。
そして書類検討で進んでも現場調査をしなければならない例外が第6条第3項第4号にあります。
- 定期審査対象の製造所(第4条第2項による)
- 医療機器共同審査プログラムによる審査結果、重大な不適合事項の発見等で国民健康に影響を与え得ると食薬処長が認める製造所
- 融複合医療機器の製造所
- 人体由来成分を含有するか人体由来組織を使用した医療機器の製造所
つまり初回審査は書類検討で進んでも定期審査では現場調査を受ける構造です。これを知らずに3年後の日程を空けておくと、その時に準備期間がありません。
5. では今、誰がこれを見るべきか
輸出を準備する国内製造社
- 対象国が米国・カナダ・日本・豪州・ブラジルのうち2か国以上ならMDSAPの値打ちが大きくなります
- 発刊された3種のうち自社系列に近いものを先に見ます — 機械・器具か、材料・用品か
- 滅菌医療機器ならガイドラインの滅菌審査基準の項目がそのまま使えます
海外製造元を置いて輸入する国内業者
- 製造元が既にMDSAP適合認定書を持っているかをまず確認します。あればKGMP準備の形が変わります
- 契約書にMDSAP審査結果資料(不適合報告書・是正予防措置を含む)の提供義務を入れる必要があります。第7条第3項が求めるのは認定書の写しだけではありません
- MDSAP対象製品と国内審査対象製品の相関関係資料は製造元が作ってくれなければ国内では作れません
すでにKGMPを運営中の製造社
- ISO 13485体系とMDSAPの関係はISO 13485とKGMPガイドで扱います。要約するとISO 13485は準備を楽にし、MDSAPは手続きを短くします
よくある失敗
- MDSAPをKGMP免除と理解する場合 — 条文が与えるのは書類検討の経路です
- 書類検討で初回審査を通過した後定期審査の現場調査を予想しなかった場合(第6条第3項第4号)
- 製造元から認定書の写しだけを受け取り審査結果資料・相関関係資料を要請しなかった場合
- MDSAP適合認定書が現場調査を受けて有効なものか確認しなかった場合(第3条第2項第3号ナ目)
- 有効期間がMDSAP適合認定書と同一に算定される点を台帳に反映しなかった場合(第9条)
今確認すること
- 輸出対象国にMDSAP正会員国が2か国以上含まれるか確認する
- 発刊されたガイドライン3種のうち自社系列に近いものをダウンロードして読む
- 海外製造元があればMDSAP適合認定書の保有可否と現場調査の履歴を確認する
- 契約書に審査結果資料・相関関係資料の提供義務があるか見る
- 書類検討で進む場合、定期審査時の現場調査を日程にあらかじめ入れる
- 適合認定書の有効期間の算定方式(MDSAPと同一)を管理台帳に反映する
MDSAPは一度受けて複数の場所で使う文書です。海外進出と国内KGMPの両方で値打ちが出ますが、どちらも手続きがなくなるわけではありません。自社製造所が書類検討の経路に該当するか、製造元からどの資料を受け取っておくべきかを、まず無料事前検討でご確認いたします。
よくあるご質問
- Q. MDSAPとはどのような制度ですか?
- 食薬処の報道参考資料はMDSAPを、医療機器の製造及び品質管理基準の共同審査を目的として2017年に作られた国際協議体と説明し、米国・カナダ・日本・豪州・ブラジルの5か国が共同で審査すると明らかにしています。MDSAP認証を取得すれば当該国のGMP認証審査を全面的または一部免除され得ます。韓国は正会員国として列挙されていませんが、KGMP告示がMDSAP適合認定書を別途認める構造を置いています。
- Q. ガイドライン3種はどの品目を扱いますか?
- 国内医療機器の輸出実績等を考慮して選定した3品目です。汎用電気手術器(3等級)、組織修復用生体材料(4等級)、汎用超音波映像診断装置(2等級)です。等級が2・3・4に分かれ、機械・器具系列と材料・用品系列が一緒に入っているため、自社品目が正確に一致しなくても系列が近ければ参考にする余地があります。
- Q. MDSAPがあればKGMPは免除されますか?
- 免除されません。KGMP告示第6条第2項第6号はMDSAP適合認定書を保有する場合を書類検討のみを実施できる場合として挙げているだけで、適合性認定の手続きそのものがなくなるわけではありません。さらに同条第3項第4号は、定期審査対象の製造所、重大な不適合が発見され食薬処長が認める製造所、融複合医療機器の製造所、人体由来成分・組織を使用する製造所については現場調査を行うとしています。
- Q. ガイドラインはどこで見られますか?
- 報道参考資料は、食薬処の代表ホームページで法令・資料 → 法令情報 → 公務員指針書・民願人案内書の経路から確認できると案内しています。担当部署は医療機器管理課です。
