ガイドライン輸入・通関2026.09.22
海外メーカーの韓国進出 — 韓国内の許可保有者(KLH)とICC構造
韓国の輸入品目許可は、メーカーではなく輸入業者の名義で発給されます。そのため海外メーカーは、まず韓国で「許可を保有してくれる会社」を必要とします。総代理店・現地子会社・独立した許可保有者(ICC)の三つの構造で許可が誰に残るのか、契約が終了すると何が起きるのか、契約書にあらかじめ書いておくべき条項を整理しました。
要点 — 韓国では、輸入医療機器の品目許可・認証・届出は輸入業許可を受けた輸入業者の名義で行われます(医療機器法第15条)。輸入業者は韓国内に品質検査施設と品質責任者を置かなければならないため、韓国法人のないメーカーは、まずその役割を担う会社を必要とします。海外ではこの役割をKLH(Korea License Holder)と呼びますが、法令用語ではありません。許可を誰が持つかによって三つの構造に分かれます — 総代理店が輸入業者を兼ねると契約終了時に許可も総代理店に残り、子会社を設立すれば支配は確実ですが人員と施設が必要になり、独立した許可保有者(ICC)を置けば許可と販売契約が分離されます。どの構造でも、許可名義・資料の所有権・終了時の取り扱いを、契約書に先に書いておく必要があります。
なぜ韓国では「許可を持っていてくれる会社」が別途必要なのか
FDA登録やCE認証はメーカーのものです。韓国の輸入許可は違います。医療機器を輸入して販売するには、まず輸入業許可を受けなければならず(医療機器法第15条第1項)、その許可を受けた輸入業者が、輸入しようとする製品について品目ごとに輸入許可・輸入認証を受けるか輸入届出を行います(第2項)。輸入業許可を申請する際には品目1件以上を同時に申請する必要があり(第3項)、品質検査に必要な施設と品質管理体系をあらかじめ整えておく必要があります(第4項)。
さらに人の要件が加わります。製造業許可の品質責任者条項(第6条第7項)が輸入業に準用され(第15条第6項)、輸入業所ごとに1名以上の品質責任者を置かなければなりません(施行規則第11条第1項、輸入業は第34条により準用)。品質責任者には資格要件が定められており、職務の範囲も法令が定めています(施行規則第12条)。どのような資格が該当するかは品質責任者ガイドで扱いました。
まとめると、韓国の輸入品目許可は韓国内に施設と品質責任者を備えた輸入業者の名義でのみ存在します。メーカーが韓国法人なしにこの要件を直接満たすことは難しく、そのため海外メーカーは韓国進出を検討する最初の段階で「誰が許可を持つのか」を決めることになります。この役割を海外ではKLHと呼びます。EUの欧州代理人や米国のUS Agentのようにメーカーに代わって連絡を担う代理人ではなく、許可の名義人であり法的責任者である点が異なります。
許可は誰のものになるのか — 三つの構造
許可保有者を誰にするかによって三つの道があります。どれが良いというより、それぞれの構造で許可がどこに残るのかが異なります。
| 総代理店が輸入業者を兼ねる | 韓国子会社・支店 | 独立した許可保有者(ICC) | |
|---|---|---|---|
| 許可の名義 | 総代理店 | メーカーの韓国法人 | 許可保有者 |
| 施設・品質責任者 | 総代理店が整える | メーカーが直接整える | 許可保有者が整える |
| 販売契約と許可 | 一つの契約に紐づく | 分離 | 分離 |
| 契約終了時の許可 | 総代理店に残る | メーカーに残る | 許可保有者に残る(販売パートナーの交代とは無関係) |
| メーカーの支配力 | 低い | 高い | 契約で定める |
| メーカー側の費用・人員 | 低い | 法人設立・人件費・施設 | 許可保有者の運営費 |
| 適する場合 | パートナーが確定し関係が長期的なとき | 韓国売上が法人運営費を賄えるとき | 市場を知る前にパートナーを固定したくないとき |
一つ目の構造が最も多い理由は単純です。製品を売りたい韓国企業が先に現れ、その企業が輸入業許可まで取ると申し出るからです。問題はその後に生じます。
総代理店が許可を持つと何が起きるのか
品目許可に関する輸入業者の地位は、その営業を譲渡した場合に譲り受けた輸入業者へ承継されます(医療機器法第47条第3項)。裏を返せば、販売契約が終了したという理由だけで許可が次のパートナーに移ることはありません。既存の総代理店が営業譲渡に協力する必要があり、協力しなければ新しいパートナーは輸入業許可・品目許可・KGMPを最初から進めることになります。等級によっては数か月から1年以上かかり、その間製品は市場から消えます。
メーカーが総代理店の交代をためらう理由は、多くの場合パートナーの能力ではなくこの構造です。販売が振るわなくても、独占を回収したくても、許可が一緒に消えるため決定を先送りします。韓国の販売事業者の立場から同じ問題を扱った記事が輸入業許可で止まった販売事業者の三つの道です。
この構造のまま契約書だけでリスクを減らすことはできます。終了時の営業譲渡協力義務、許可資料の所有権、最低数量条件と解除権を入れればよいのです。ただし協力義務は協力を引き出すのに時間がかかり、総代理店が廃業していたり紛争中であったりすると、条項があっても実行は遅れます。
ICC(In-Country Caretaker)とはどのような構造か
ICCは、販売を行わない会社が輸入業者となり、許可だけを保有する構造です。許可保有者が輸入業許可と品目許可を自社名義で取得し、品質責任者の運営・保管および流通管理・副作用報告・回収対応といった輸入業者の法定義務を自ら履行します。販売パートナーはこの許可保有者から製品を受け取って販売し、販売業届出を行うだけで済みます(医療機器法第17条)。韓国の販売業届出には品質責任者の要件がないことが、この分業を可能にしています。
| 海外メーカー | 許可保有者(ICC) | 販売パートナー | |
|---|---|---|---|
| 担う業務 | 製品の生産・供給、技術文書・試験資料の提供、品質維持 | 輸入業許可・品目許可・KGMP、品質責任者、保管・流通、市販後管理 | 販売・流通、市場フィードバック |
| 必要な許可 | なし(韓国法人不要) | 輸入業許可+品目許可・認証・届出 | 販売業届出 |
| 契約関係 | 許可保有者と供給・規制対応契約 | メーカー・販売パートナー双方と契約 | 許可保有者と販売契約、メーカーと独占条件 |
この構造が変えるのは三つです。第一に、許可着手とパートナー探索が順番ではなく並行になります。許可が進む間に複数候補の販売力を比較できます。第二に、独占は依然として商業条件として残ります。最低数量と解除条件を付けて独占を与えることができ、変わるのは契約が終了しても許可が消えないという点です。第三に、販売パートナーが複数でも許可は一つです。
明確にしておくことがあります。これは名前だけを貸す構造ではありません。輸入業者の施設・品質責任者・遵守事項は許可を受けたその会社が履行しなければならない義務であり(第15条第4項・第6項)、許可を受けた事項と異なる運営をすれば許可取消と業務停止の事由になります(第36条)。実際の業務を行わない許可保有者はこの構造における最大のリスクですので、ICCを検討する際は、その会社が品質責任者を誰にし、市販後管理をどのように行うのかから確認する必要があります。当社がこの構造をどのように運営しているかは輸入・認証構造サービスに記載しています。
契約書にあらかじめ書くべきこと — 条項チェックリスト
どの構造を選んでも、以下の項目が契約書にないと、後で許可が足かせになります。
- 許可の名義人 — 輸入業許可と品目許可を誰の名義で受けるか。ラベルの輸入業者の商号・住所もこの名義に従います(表示記載ガイド第20条第1号)
- 許可資料の所有権と再利用権 — 技術文書・試験成績書・臨床資料の原本を誰が保有し、許可保有者が変わる際に再利用できるか
- 終了時の許可の取り扱い — 契約が終了したら営業譲渡(第47条第3項)に協力するのか、その期限と費用は誰が負担するのか
- 独占の範囲と条件 — 地域・チャネル・期間、最低購入数量、条件未達時の解除権。独占条項と許可条項を一つの文にまとめないこと
- 市販後義務の分担 — 副作用報告・回収・更新は法律上輸入業者の義務であるため、誰が費用を負担し誰が実行するのか。許可後の義務の全体像は許可後に始まること
- 変更対応 — 製造元・モデル・原材料が変わると変更許可が必要になり(変更許可ガイド)、メーカーが変更の事実をいつ知らせるか
- 費用構造 — 着手費用と運営費を分けて書くこと。「輸入原価の何%」のように基準が開いている項目は総額を予測できなくします
どの構造が合うのか — 判断の順序
- 韓国売上が法人運営費を賄える規模か — そうであれば子会社が支配力の面で最も優れています。そうでなければ次へ
- 販売パートナーがすでに確定しており、輸入業許可と品質責任者を自ら備え、関係が長期的か — そうであれば総代理店構造に終了条項を入れるだけで足りる場合があります
- パートナーをまだ選んでいない、複数チャネルを持ちたい、パートナー交代の可能性を残しておきたいか — このときICC構造が合います
輸入構造自体のリスクが大きい製品 — 追跡管理対象、冷蔵・冷凍保管が必要な製品、回収の可能性が高い新製品 — は許可保有者の運営負担が大きくなるため、当社は依頼者名義での直接登録をお勧めする場合があります。構造を決める前に製品・製造元・販売計画をお送りいただければ、どの構造が適用可能かを1営業日以内に一次回答いたします。
よくある間違い
- 総代理店契約書に許可条項がない — 「輸入および販売を総代理店が担当する」の一行で終わっていれば、終了時の許可の行方は決まっていません
- KLHを代理人として理解する — 韓国の輸入業者は連絡窓口ではなく、許可の名義人であり法的責任者です
- 海外認証で許可が代替されると考える — FDA・CE・MDSAPの資料があっても韓国の許可は別であり、海外試験成績書の認定範囲も別途確認が必要です(海外試験成績書ガイド)
- 資料の所有権を定めない — 許可保有者が変わる際に試験をやり直すことになる原因です
- 許可保有者の実際の運営能力を確認しない — 品質責任者が誰か、倉庫と市販後管理体系があるかを聞かずに契約します
進行前チェックリスト
- 韓国進出の規模想定(3年間の売上・チャネル数)があり、それをもとに子会社の要否を判断した
- 許可の名義人を決め、その会社の施設・品質責任者を確認した
- 技術文書・試験成績書の所有権と再利用権を契約に書いた
- 終了時の営業譲渡協力義務・期限・費用を契約に書いた
- 独占条項と許可条項が分離されている
- 市販後義務(副作用報告・回収・更新)の実行者と費用負担者を決めた
- 等級別の手続きと期間を確認した — 許認可手続き総まとめ・手続き・期間・費用
許可構造は、製品が市場にある間ずっと機能し続ける契約です。製品資料と製造元情報、韓国での販売計画をお送りいただければ、三つの構造のうちどれが適用可能か、契約書に何を先に書くべきかを無料事前レビューで1営業日以内に一次回答いたします。
根拠法令:「医療機器法」(法律第21949号、2026年9月15日施行)第6条(製造業の許可等)第7項・第6条の2(品質責任者遵守事項等)・第15条(輸入業許可等)・第17条(販売業等の届出)・第36条(許可等の取消と業務の停止等)・第47条(製造業者等の地位承継等)第3項、「医療機器法施行規則」(総理令第2127号、2026年7月1日施行)第11条(品質責任者の資格等)・第12条(品質責任者の職務範囲等)・第34条(準用) — 2026年9月22日、国家法令情報センターの原文で確認。KLH・ICCは法令用語ではなく実務上の通称であり、法令改正により内容が変わることがあります。
よくあるご質問
- Q. KLH(Korea License Holder)は法律上の用語ですか?
- いいえ。医療機器法には「韓国内の許可保有者」という地位は別途ありません。法律が定めているのは輸入業許可を受けた「輸入業者」であり、輸入品目の許可・認証・届出はその輸入業者の名義で行われます(医療機器法第15条第1項・第2項)。KLHは海外メーカーがこの輸入業者の役割を呼ぶ通称であり、契約書にKLHと書いても韓国法上の地位は輸入業者です。
- Q. 総代理店が許可を持っています。総代理店を変えると許可はどうなりますか?
- 許可は総代理店(輸入業者)に残ります。品目許可に関する地位は、その営業を譲渡した場合に譲り受けた輸入業者へ承継されるため(医療機器法第47条第3項)、既存の総代理店が営業譲渡に協力しなければ、新しいパートナーは輸入業許可と品目許可を最初から取り直すことになります。契約書に終了時の許可の取り扱い条項がないと、総代理店の交代は事実上できなくなります。
- Q. ICCは名義だけを貸す構造と何が違いますか?
- 輸入業者の施設・品質責任者・遵守事項は、許可を受けたその会社自身が履行しなければならない義務です(医療機器法第15条第4項・第6項、施行規則第11条・第12条)。名前だけを貸して実際の輸入・品質管理・市販後管理を他社が行う構造は、この義務と整合しません。ICCは、許可保有者が実際の輸入業者として品質責任者の運営、保管・流通管理、副作用報告、回収対応を自ら行いつつ、販売は独占せず販売パートナーに委ねる構造です。
- Q. 許可取得に使った技術文書や試験成績書は誰のものですか?
- 法律が定めるのは許可の名義人であって、資料の所有権ではありません。資料の所有権と再利用権は契約で定める必要があり、定めていないと許可保有者が変わる際に試験をやり直すことになる場合があります。メーカーが原本を保有し、許可保有者には使用権のみを与える方式が、後の移転を最も容易にします。
